FC2ブログ

禁断のらぁ麺へのリスペクト:69'N'ROLL ONE

私事で恐縮だが、私は今年で50歳。進学で上京後、渋谷で「桂花」にハマってラーメンの食べ歩きを始めてちょうど30年。その30周年の記念ラーメンを69'N'ROLL ONEで作って貰える事になった。21日にイベントとして実施していただいたのでその顛末を。

話の一番おおもとは、2001年6月10日に遡る。このブログでも何度か触れている、私の師匠にあたる故・武内伸さんの生涯通算五千杯目の記念ラーメンを、「支那そばや」の佐野店主がその日に作り上げた。この時は、武内さん以外はラ博スタッフとごく少数のゲスト客がご相伴にあずかったが、そのラーメンは本当に凄かった。一人のラーメン職人が武内さんにどれだけの信頼や友情を寄せているのかが本当によく判るオーラが吹き上がるラーメン。私はこのラーメンを食べ、「ああ、今後自分は揺るがない自信をもって、ラーメンの可能性とすばらしさを人に伝えて行く事が出来る」と思った。そして、ラーメンでこんな絆をむすんでいる佐野さんと武内さんをうらやましくも思ったし、改めてリスペクトもしていた。

その後、そのラーメンは「禁断のラーメン」と名付けられ、一杯三千円と言う価格でもってその価値を世に問われる事になる。この「禁断のラーメン」のすばらしさは当時大崎さんが書いた記事に詳しいが、個人的にはラーメンの味に加え、佐野さんと武内さんそのものの思い出として心に刻まれている。

五年前に武内さんが亡くなった後、69'N'ROLL ONEの嶋崎店主とは、武内さんの思い出話をよくしていたが、その際にこの五千杯記念ラーメンの話もよくしていた。そんな中で「北島さんの何か節目のラーメンを俺が作るよ」と言う話になっていたが、実は私は「自分が何杯食べたか」にはあまり興味がなく、正確な杯数は覚えても記録してもいない(^_^;)。なので、ちょうど食べ歩き30年になる2013年に何かお願いしようかなとなっていた。

もともとの予定では、実は69の移転前、町田店の営業最終日にイベントをしようとしていたが、後述の理由で先送りとなり、21日に赤坂本店の初イベントとして実施していただいた。

DSC00370

イベント自体は日曜日、一般営業と並行して実施。素材確保の関係で限定数は90杯前後。どのような形で提供するか迷ったが、とりあえず私の知り合いにFBやTwitterなどで募集をかけたところ三時間ほどで全枠が埋まってしまい、結果的に完全招待制となってしまった。

DSC00354

当日駆けつけてくれた「G麺7」「啜磨専科」の後藤店主と「魚雷」等の塚田店主。他にも何人もの店主がいらしてくれたが、このお二人はラーメン作りにも協力して下さった。

DSC00358

普段はクローズドの厨房を、イベント時はオープンにして営業。町田時代と雰囲気は変わりつつも、緊張感のある心地よい空気は根本的には共通していると思った。

DSC00365 DSC00372 DSC00390

10年以上の付き合いもある友人達も何人も。嬉しかったなあ。

さて、いよいよラーメンの提供を開始。スタート時にはかなり混雑していたので、まずは一回りお客様をさばいてから私にもラーメンを作ってもらった。品名は「禁断のらぁ麺へのリスペクト(1500円)」。嶋崎店主が佐野店主に、そして私が武内さんに対するリスペクトを込めてこの名前を使わせてもらったのだ。

69_kindannnoramenhenorispect_01_130721

最初に出て来たのが「前菜」。小麦粉「きたほなみ」をメインに作った超幅広麺でご飯を巻いて食べるスタイル。今回は、麺には別の小麦粉を使っているので、そちらとの差異を感じて欲しいと敢えて小麦粉を変えてみたそう。

69_kindannnoramenhenorispect_02_130721 69_kindannnoramenhenorispect_03_130721禁断のらぁ麺へのリスペクト

相模原に出た最初の69の店舗、いやそれこそその前のキリン食堂時代から嶋崎店主の限定は数多く食べてきたが、私がこれまでもっとも印象に残ったのは2007年3月に出された「カドヤ食堂からの贈り物」だ。地鶏の群れのボスにあたる鶏は通常の鶏よりも生命力が強く、また飼育期間も長期間になるので肉は硬く食用には向かないが、そのダシは本当に素晴らしい。そのボス鶏を使った塩が「カドヤ食堂からの贈り物」」だったが、今回は私の好きな醤油に仕上げてもらった。

何でも、その醤油化が今回一番の難問だったらしい。貴重な食材だけに試作の機会も限られていて、バランス取りに苦労したとか。

そのぱっと見は、一見「塩?」と思う淡さ。最近は清湯でも濃厚にエキスが溶け込み、ダシ自体が琥珀色になっているケースもあるが、そのくらいこのラーメンの色合いは淡い。その淡さに、醤油加減の微妙さが伺え、立ち上ってくる香りと共に「ああこりゃあ絶対美味い」と食べる前から半ば確信した。

スープを飲んだ感想は、もちろん「美味しい」「凄い」「素晴らしい」などもあるが、一番強かった思いは「好きな味」だ。嶋崎店主とはいろいろとラーメンを挟んでしょっちゅう会話をしているが、それにしたって他人の舌、他人の好みを、一度の味見もさせずにここまでピンポイントに突いてくるのか。「ラーメン評論家」としての分析やら何よりやらよりも「好き」「嬉しい」の感情がわき上がってくる。

スープのエキスは決して強すぎない。昨今は清湯でも相当力強いダシも増えているが、それらに比べればむしろ控えめな抽出だと思う。が、その抽出されたエキス自体のパワーが半端ない。言ってみれば、並の昆布をぐらぐら煮出して強引に「濃厚」にした味と、ハイグレードかつ大量の昆布をさっと焚いた時のすっきりとキレがありながらも深い印象を残す味との違いのような物だろうか。スープの土台である「水」の存在感を充分に残しながらも、ボス鶏ならではのきらめくような大粒の旨味成分・鶏の生命力がぐいぐいぐいぐいと迫ってくる。

ボス鶏の力強い味だと、ついそのパワーを強調する方に持って行きそうだけど、それをこの濃度に抑える事でかえってその存在感を際立たせている。これまで私は、嶋崎店主については「2号らーめんのような正当派豪速球」と「コカクーラーのような大変化球」の両方を投げられる投手だと思っていたが、今回のラーメンでは更に「精密機械と言われた北別府のようなコントロール」も持っているのを改めて知ったような気がする。

スープだけで呆然としている訳にもいかないので麺をすすると、これがまた「好き」(^_^;)。今回の麺は「G麺7」「啜磨専科」の後藤店主が提供してくれた。この限定の話を聞いた時に「是非自分に麺を担当させて下さい」と名乗りでてくれた後藤店主が選んだ小麦粉はハルユタカ。一昔前は、ラーメン用の国産小麦粉として一世を風靡したのはラヲタならみんな知っているが、最近は品種の世代交代もあって第一線ではほとんど聞かなくなっている。

その流通量も少ないハルユタカをわざわざ探して来たのは「北島さん、支那そばやさんの麺が大好きじゃないですか。支那そばやさんの麺と言えばやっぱりハルユタカでしょう?」。はいその通りです【爆】。麺は当然細めのしなやかな物で、スープとの絡み、一体感も極上。当然ながら麺自体の甘味、風味もしっかりと感じられる。そしてその麺を、嶋崎店主が一杯一杯絶妙の柔らかさで茹で上げ、全体をしっかり糊化させて小麦粉の良さを全部引っ張り出している。後藤店主の意図を、全部受け取っているんだろうなあ。

チャーシューは沖縄アグー豚の貴重な純血種。今回は、「気むずかしや」「魚雷」などの塚田店主が調理を担当してくれた。塚田さんともまた会って話す機会は多いが、各店主の中でも私の健康を一番気遣ってくれるのが彼だ。その彼らしく、脂はほとんど感じず、赤身はしっとり柔らかく、それでいて豚の旨味は充分に残し、一枚でもばっちり満足出来る仕上がり。ほんとにうまい。

そして何よりも丼だ。既に何カ所かのblogなどにこのラーメンの写真は上がっているが、私の丼だけ他の人と微妙に異なる。これは、先述の「禁断のらぁ麺」で佐野店主が使った丼を、塚田店主が頼み込んで貸してもらったとの事。佐野店主と武内さんの絆を象徴するかのような丼を使うと言う塚田店主の気遣いと、その宝物を貸してくれた佐野店主の優しさには、本当に涙が出そうになった。「自分は周りに支えてもらっているんだなあ」と心底実感できた。

当然の事ながら完食完飲。ただ、「もう一杯食べたい」とはあまり思わなかった。三人の店主が丼に込めてくれた渾身の思いは、一杯で充分に伝わってきたから。

 69_kindannnoramenhenorispect_04_130721

当日は、ラーメンを注文したお客には無料でかき氷がサービスされていたので私もそれを。和三盆のあっさりした蜜と氷の冷たさが、熱くてしょっぱいラーメンの後には実によく合う。これで舌と気持ちをクールダウン【笑】。

本当に、心に残るラーメン、そして一日になった。開催中の11時から17時までお店にいさせてもらったが、来て下さった皆さんからのお祝い、励ましがまた何よりも心に染みる。ラーメンも楽しんで貰えたなら嬉しい。

さっきも書いたが、私は「武内さんの五千杯記念ラーメン」を食べて「揺るがない自信をもってラーメンのすばらしさを語れる」と思ったが、今回食べていただいた方に、もし同じ感想を持ってくれた方がいたならと思うし、このラーメンが長く思い出に残ってくれればそれも素晴らしいと思う。作ってくれた嶋崎・後藤・塚田各店主、当日対応して下さったスタッフ、食べに来てくださった皆様すべてに感謝した一日。本当にありがとうございました。

【データなど】
地下鉄赤坂見附駅、赤坂駅、溜池山王駅/東京都港区赤坂3-7-11/03-3583-5569/11:00~23:00(売り切れ仕舞いあり)/定休日未定(当面無休)


大きな地図で見る
スポンサーサイト

テーマ : ラーメン - ジャンル : グルメ

Tag : 2013新店 2013限定

プロフィール

siukitajima

Author:siukitajima
「超らーめんナビ」で達人を務めさせていただいていた北島です。2013年6月以降、こちらのblogで「速報」を中心としたラーメン情報をメインに掲載していきます。

私の紹介動画です(音声が出るので注意)

最新記事
月別アーカイブ
カテゴリ
天気予報

-天気予報コム- -FC2-
blogカウンター