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ラーメン店の「気」【コラム】

「男性ラーメン店主からは『気』を、女性ラーメン店主からは『間』を感じる」と表現したのは、ラーメン評論家の元祖的存在でありラ博勤務時代を含めて私が「師匠」と思っている故・武内伸さんだ。彼の言語力、表現力は非常に力に満ちていて、言葉の一つ一つに独特の説得力があった。

さてその「気」と「間」。何だか非常によく判る感覚ではあるが、じゃあ実際にどんな感覚か説明しなさいと言われるとかなり言葉にしにくい(^_^;)。まあそれが「感覚」と言う物だろうけれど、自分では勝手に「気」とは元気とか気合いとか、「間」は柔らかさとか細やかさだろうなと解釈している。

最近自分なりに思うのは、店主の男女もだが、「新進の店には『気』を、老舗には『間』を感じる」と言う事。若さと老練と言い換えてもいいのかな。特に地方の老舗は、店ごとにゆっくりと流れる雰囲気がそれぞれいい。気張った感じもなく、お店の人も常連さんもくつろいでいるんだけど、こう、無駄がなく、かと言って余裕もある。長い年月をかけて築かれて練り上げられた時間と空間。この「間」を、ほんのちょっとだけよそ者が貸してもらいに行く。私にとって、地方遠征で老舗に寄るとはそう言う事だ。

対して「気」の方はどうだろう。お店に入った時の雰囲気としてはこちらの方が「間」よりも判りやすいかな。先ほど「新進の店」と書いたが「新進"気"鋭」との言葉もあるように、若い、張り切った、力強い「気」。様々な研究をして美味いラーメンを作ろう、お客にサービスしよう。お店によっては「どうだぁ!」とも言わんばかりの「気」。時には空回りしている事もあるけれど、その「気」を浴びに行くラーメン食べ歩きも確かに楽しいものだ。

ただ、少し前からその「気」に関してちょっと考える事があった。私事で恐縮だが私は昨年の秋から年末にかけて3ヶ月ほど入院していた。これまで怪我での手術は何度か経験があったが、今回は初めて開腹し、内臓にメスを入れる事になり、手術後は大幅に体力を削られもした。

当然「ラーメン食べたいなあ」「退院したらあそことあそこに行くぞ」「ああ、どんどん宿題が溜まって行く……」と思い続けていたんだけど、入院中は「気」を感じる店に行こうとの気持ちががくんと萎えてしまった。張り切った強い「気」を浴びるのが億劫で耐えられない。「行きたい」と思いつくのは何気ない老舗ばかり。自分でもこれは正直驚いた。

ラーメンマニアであれば、お店の「気」はむしろ心地いい。積極的にもてなし、良い物作りを心がけ、独特の工夫を随所にこらしたお店(とラーメン)である程に「頑張ってるなあ」「凄いなあ」と感心して嬉しくなってくる。本当にワクワクしてくる。

が、これはやはり「ラヲタ」独特の感覚なのかもと入院を経て思うようになってきた。むろんラヲタでなくてもそう言う雰囲気を楽しめる人は多いだろうが、反面ラーメンに対しては「コダワリ」とか「頑張り」よりも「気軽さ」を求める層は確実に、それもかなり居る。そう言う人にとってはこの「気」は逆にウザイ、鬱陶しいと思えるんだろうなと、ある程度実感をもって判ってしまったような気がする。

もちろん退院して回復した今は、「気」もまた存分に楽しめるようになった。ただ、あの時の感覚は忘れたらいけないと思っている。私は「ラーメン店の商売はブロガやマニアや評論家ではなく大部分は一般のお客様が相手」とは常々言っているが、改めてそれを考えるようになった。

以下は直感的に思った事で検証も確認もしていないが、もしかしたら「人気店」と「老舗」の違いは、まさに「気」を出すか「間」を出すかの違いなんじゃないかなあ。努力や工夫、頑張りをどんどん感じさせる「気」を前面に出さず、のんびりまったりとリラックスさせる「間」を会得したお店が本当の意味での老舗になれるのかも知れない。

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「元祖」って何だろうね【コラム】

いわゆる「元祖」「本家」争いと言うのはラーメンに限らず飲食業、いやあらゆるジャンルで見聞きする、珍しくも何ともない話だ。もちろんご多分に漏れずラーメンでも「元祖」にまつわるいろんな逸話は耳にする。全く無関係でラーメンのスタイルも違うチェーン店が、東京のとある人気店の店名に「元祖」とだけつけて展開して最終的には倒産していった件とか、歴史的にも「元祖」と認められてきた店が、他地域で同じスタイルが先に存在していたと言う話が出てきたとたんにそのスタイルを作り出した年を更に過去に言い換えたりとか……。

個人的には「元祖」を店名に入れて名乗る程度ならともかく、それをあまりに声高に言いつのるのは、個人にしろ企業にしろ、あんまりかっこよくはないよなと思うケースの方が多い。

数年前、ラーメン店に於ける半熟味玉の「元祖」についてTwitterでちょっとした論争があった。定説ではラーメン店に半熟味玉を持ち込んだのは「ちばき屋」となっているけど、それは本当なのかと言う話だ。その時には、 その疑問を呈したツイートに対して他のラーメン店主などが「いや実はウチの方が早かった」みたいなツイートを返していたように記憶している。

実際問題として、半熟ではない「味付け玉子」「煮玉子」「ルータン」のたぐいはちばき屋よりもっとずっと前からあった。個人的に最初に食べたのは30年以上前の「桂花」だし「丸福」あたりには多分もっと前からあった筈だ。

更に言うと「半熟玉子」自体が昔からある料理だし、その半熟玉子に味をつけた一品料理も京都の料亭「瓢亭」で「瓢亭卵」として提供されて有名だった。諸々考えると、もしかしたら「ちばき屋」以前に半熟卵に味を染みこませて出したラーメン店が存在した可能性の否定はできない。

但し、である。私の「元祖」に対する考え方は、当時mixiに書いたこの文章の通り。

半熟味玉に限らず「味噌ラーメン」「冷やし中華」なんかでも似たような元祖論争はあるし、どうも広島の「新華園」は山岸さんより先につけ麺を出していたらしいとの説もあるが、個人的にはそれでも「元祖」は揺るがないように思う。

一番最初に出したと言う事実は尊重はするが、「元祖」と言うのは「今現在広まっているそのスタイルの、オリジナルとなっているかどうか」が重要だと思うから。現在のおおくのつけ麺店が、ルーツをたどれば新華園ではなく大勝軒になるのは明らかだし、半熟味玉もそうだと思う。味噌ラーメンの元祖はやっぱり札幌だろう。

だから、「元祖」がどこかを模倣したと言う事実が出てこない限りはその地位は揺るがない。と思う。

「元祖」と言うのは単なる順番争いではなく、そのスタイルを広めるに至った努力・品質のような、リスペクトされるべき理由があってこそ名乗れる……いや、周囲が認めるんだろうなと思っている。それがあれば本人がいちいち喧伝しなくても周囲が自然にそう言ってくれる。

まあ、昨今はただ言葉上の「元祖争い」だけじゃなく、商標まで絡んだりする場合があるから法的にもややこしくなってくるんだよなあ。更に、レシピには著作権も無いけれど、あの人気店の味はうちのばっちゃんが考えたとか、教えてやったのは俺だとかの話がまたちらほらとあったりね。

商売だから勝ちに行くのは当然だとしても、今どきのネット社会だとそのあたりの真相は結構水面下で流通したりする物だし、いずれはそれが表に出て最終的に恥をかくのは嘘つきの方なんだよ、と言っておいて今回は終了。

テーマ : ラーメン - ジャンル : グルメ

不味いラーメンは不味いのか

ラーメン界のトリックスターである「一条流がんこ」の一条家元によると、「あなたたちラーメンフリークは普段から美味い物ばかり食い過ぎだ。時々は不味い物も食わないと、美味い物の本当の価値は判らないよ」だそうである。単に言うだけでなく、時々実際に「不味い物ツアー」を開いていじめて勉強させてくれるのが如何にも家元らしい訳だが。

実際、今のラーメンは美味い。特にここ10年くらいの新店は、やる気のある各店主さんの研究があり、いろんなアイディアや食材情報・入手先がネットで公開されてもおり、ついでに出来合スープや完成品具材のレベルもアップしていたりで、「好みではない」「特に感慨はない」事は時々あっても「積極的に不味い」事は本当に少なくなった。

先日Twitterでとある作家さんが、「あのラーメンは不味い。個人の好き嫌いってレベルじゃない」と呟いていた。もちろん作家さんは店名や写真は一切アップされていなかったが、「個人的好き嫌いのレベルじゃない」と言う所に興味を引かれ問い合わせてみた所、店名とメニューを教えていただけた。

で、某先日某所某店某品を食べて来た【笑】。ラーメンに限らず自分の専門度・ヲタク具合がこじれると普通の人と感覚がずれてくるのはよくある話だが、一応広くラーメン情報を発信させて頂く立場でそれはよろしくない。なので、少々上から目線かもだが「普通の人がケチョンケチョンにいう味」を知っておくのも勉強だとも思った。

実際に食べての感想は、「ああこりゃあ確かに不味いわ」(^_^;)。まだまだ「普通の感覚」を喪っていないのに安心すると同時に、ともあれこれの固形物は一通り食べなきゃなあと一口目からぐったりした。

ラーメンは、とにかくスープが不味い。素材感の全く無いぺらぺらな味なのに旨味は充分。醤油の風味も塩分も足らず、脂もほとんどないので牽引力が全く不足だ。そして何より、大量に入った野菜。炒めはしないがスープ・タレと一緒に煮ているのでその点は札幌風モドキと言っていいのかな? その、決して新鮮とは言えない野菜の臭みがスープにトドメをさしていて、ついでにメンマの風味も決して新鮮とは言えない【爆】。私は結局「彦龍」は食べられなかったんだけど、対決してみて欲しかった気がする。さながらゴジラ対キングギドラの様相だったのではなかろうか。どちらが勝っても誰も幸せにならないが。

作家さんによるとそこは20年くらい営業しているそうで、「なぜ潰れないんだ」と不思議がっていらしたが、まあ基本的には居酒屋営業だからだろうなぁ。つまみメニューも沢山あるので、多分呑んでつまんでラーメンは食べずに帰るお客も多そう。実際私が行った時にも酒を前にとぐろを巻いているお客が数人いた。研究熱心で頑張っているのに短命で終わる店も多い中、不公平な気もするけど、これが商売の難しさなんだろうなあ。まあ、最寄り駅から徒歩1~2分程度の好立地も大きいんだろうけど……。

別に店を叩く気とかも全くないので結論は特に無いが、ただ個人的に勉強になったのと、努力しなければ(あるいは努力の方向が明後日だと)ラーメンはこんなに不味く作れるんだなと改めて思った。「普通に美味い」は実は貴重なんだなあ。「普通以上に美味い」ばかり選んで食べている贅沢も改めて実感。確かに家元の言うように、たまには不味い物も食べなきゃダメかも。それも、わざと不味く作った物じゃなく、「自然体で作っていて、それで普通に商売できている不味い物」を、だろうなあ。

そう考えると「不味いラーメン」も貴重かも。たいていは20年も保つ前に淘汰されるだろうから。そして、「こんな不味いラーメン(を作る店)」にも一定の、少なくとも20年程度営業を続けられるだけの需要があるという事も、きっちり認識しておく必要がありそうだ。作る側もラヲタ側もね。

一応写真も撮ったんでモザイクをかけてアップしようかと思ったけどやめておきます。地域特定のヒントにもしたくないから、「食べ歩き」じゃなくて「コラム」カテゴリにしておこう(^_^;)。万が一にもお店が特定されるのは本意ではないし、作家さんも望んじゃいないだろう。

こんな「速報」はらーナビじゃ書けなかったな。ああ楽しい【爆】。

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プロフィール

siukitajima

Author:siukitajima
「超らーめんナビ」で達人を務めさせていただいていた北島です。2013年6月以降、こちらのblogで「速報」を中心としたラーメン情報をメインに掲載していきます。

私の紹介動画です(音声が出るので注意)

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